2026年6月、オフィス家具の見本市「オルガテック」の会場内に設けられた「商店建築ラウンジ」。ここで開催されたトークセッションに、SITURAEMON を率いる石川が登壇しました。
共に壇上に上がったのは、丹青社で空間デザインを手掛ける安元 直紀氏。ファシリテーターには月刊『商店建築』編集長の塩田 健一氏を迎えました。
前編では「空間づくりの現場で、いま直面している課題とは何か?」塩田氏から投げかけられたストレートな質問に、立場の異なる2人が熱気あふれるセッションを展開。後編では、丹青社と SITURAEMON 2社のコラボレーションから生まれた新商品をご紹介します。
「今本当に欲しいオフィス家具」を考えるデザイナー・サプライヤーとしての本音も織り交ぜつつ、共同開発のプロセスや製品に施した創意工夫のポイントを語っていただきました。

安元 直紀 氏
株式会社 丹青社 デザインセンターエクスペリエンススペースデザイン局 ワークプレイスデザインユニット部長

石川 森生
ルームクリップ株式会社 『KANADEMONO』『SITURAEMON』事業責任者

塩田 健一 氏
月刊『商店建築』編集長
本当に欲しいオフィス家具にたどり着くまで

「今、一番欲しいオフィス家具は?」という問いから始まった後編セッション
塩田氏(以下敬称略):デザイナーの視点から見て、今一番欲しいオフィス家具は何ですか?
石川:実はこれ、丹青社と SITURAEMON が一緒に作っている家具の話につながるんです。
安元氏(以下敬称略):ありがとうございます。実際、僕たちがデザイナーの立場でオフィスのカタログから家具を選ぶとき、ずっと感じていた課題感や背景がいくつかありました。
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① ワークステーションの選択肢の少なさと画一化
1つ目は、いわゆる「ワークステーション」の選択肢の少なさです。もちろん各メーカーから製品は出ているのですが、デザインがどうしても画一化されていて、「正直、どこのメーカーのものを選んでも大差ないのではないか」と感じてしまう部分がありました。ここにもう一歩、新しい選択肢を増やせないかという思いが原点にあります。 -
② 素材・デザインの自由度の限界
2つ目は、それらの家具が「スチールで作る」ことを前提としているがゆえに、天板の素材やデザインに自由度が少ない点です。基本的には、用意された数種類の化粧板のバリエーションから選ぶしかなく、空間のコンセプトに合わせたアプローチがしづらいという不満がありました。 -
③ サステナブル家具の「高価格帯」ジレンマ
3つ目は、環境配慮への対応です。昨今はオール木製や間伐材を使ったサステナブルを意識した家具も増えていますが、どうしても「高付加価値」をベースにしているため、非常に高価格帯になりやすい傾向があります。大企業なら導入できても、中小企業のお客様にとってはなかなか取り入れやすい価格帯ではない、という現実がありました。

「今一番欲しいオフィス家具」への関心の高さを物語るように、会場は多くの来場者で埋まった
塩田:それは本当に大事なポイントですね。取材をしていても、お施主さん側から「再生建材を使ってほしい」「サステナブルな要素を必ず入れてほしい」という要望は 100% と言っていいほど出てきます。
デザインが画一的でなく、かつ手の届きやすいサステナブルな家具というのは、まさに市場に求められている領域です。
課題を解決する「4つのコアコンセプト」

石川:そうした文脈を踏まえて、安元さんに「こういう家具を一緒に作れませんか」とご相談いただき、現在プロジェクトを進めています。
安元:私たちが企画書にも盛り込んでいる、これからのオフィス家具に不可欠な「4つのテーマ」がこちらです。

新商品の企画書に盛り込まれた「4つのコアコンセプト」
特に4つ目のパーソナライゼーションに関しては、実際のリアルなオフィス環境を見ると、モニターアームなどをクランプで固定するシーンが非常に増えています。
「このメーカーのデスクには、この専用パーツしか付かない」という縛りがあると、ワーカーが自分好みの使い勝手にカスタマイズできません。そこを柔軟に受け入れられる汎用性を持たせました。
秀逸な「脚・シェルフ」のディテール

ソロデスクを連結し、脚を組み替えることで巨大なワークステーションへと姿を変える
塩田:こちらが、そのプロダクトですね。非常にシンプルでありながら、細かな工夫が凝らされているのが分かります。
安元:はい。基本となるソロデスクをベースに、天板を連結し、脚を組み替えることで、何人分もの巨大なワークステーションへと姿を変えることができます。
塩田:写真を見ると、天板の下に何かが置けるような「台(シェルフ)」が付いていますね。このスペースにはどういった意図があるのですか?
安元:この製品には「シェルフタイプ」と「シェルフなしタイプ」があります。長いワークステーションとして天板を連結した際、このシェルフ部分が「中央の荷重をしっかり拾って支える構造パーツ」として機能するんです。

シェルフ部分はBCP用品や配線の収納スペースにもなる
安元:機能面でも非常に便利で、例えば企業の BCP 対策(防災対策)として、デスクの下にヘルメットを常備したいというニーズは非常に多いのですが、これならきれいに収納できます。もちろん、ごちゃつきがちなOAタップや電源ケーブルを配線するスペースとしても最適です。
塩田:なるほど、構造の補強でありながら、ヘルメットや配線の収納になる。無駄がないですね。あと、もう1つ気になるのが「脚のデザイン」です。ワークステーションにすると、足元はどうなるのでしょうか?

分割・連結・追加が自在なワークステーションイメージと、開発中のオプションパーツ・天板素材
安元:そこが一番こだわったポイントです。このデスクの脚はスタイリッシュな「ハの字型」のデザインを採用しているのですが、これをそのまま中間に使ってしまうと、ハの字が座る人の膝や足に当たって邪魔になってしまいます。
そこで、ワークステーションとして連結する際、中間に入る脚だけは「反対向き(逆の筋)」に取り付けられる仕様にしました。
塩田:あ、なるほど!それはすごい。よくあるオフィス用のロングテーブルって、どうしても繋ぎ目の脚が邪魔になって、「ここの席、足が当たって使えないじゃん」というデッドスペースが生まれがちですよね。
中間の脚を反対向きに逃がすことで、決められた幅の中に3人でも、4人でも、あるいは急に人数が増えて5人になっても、足元を気にせずどこにでも椅子を引いて座ることができる。これはデザイナーならではの非常に実用的なアプローチですし、使う側としても本当にありがたい設計です。
セットアップオフィスへの先行導入、そして市場へ

丹青社が手掛ける「セットアップオフィス」プロジェクトへの先行導入
安元:実は、このデスクをすでに実際のプロジェクトに先行導入しています。丹青社が手掛ける不動産ビジネスで、築古のビルを一棟購入してリノベーションし、家具付きの「セットアップオフィス」として運用・賃貸するプロジェクトがあるのですが、そこの家具として採用しました。
空間の中に、壁付けのカウンタータイプと、中央に配置する島型のセンタータイプを混在させたのですが、同じシリーズなので全体のデザインがきれいに統一できるというメリットがありました。
壁付けの「カウンタータイプ」。
カウンタータイプの脚元。シェルフが収納スペースとして機能する。
カウンター・センタータイプが同じ空間に。同シリーズならではの統一感。
中央に配置する「センタータイプ」。中間の脚は反対向きに取り付けられている。
安元:さらにセットアップオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペース特有の課題として、「入居者が変わるたびに求められるレイアウトや席数が変わる」という点があります。これまではその都度家具を丸ごと買い替えて廃棄していたのですが、このデスクであれば、既存の部材をバラして、ソロデスクに分割したり、別の長さに組み替えたりできる。
家具を買い替えずに運用し続けられるという意味でも、非常に先進的な知見の詰まった家具になったと自負しています。
塩田:今日来られている家具サプライヤーやメーカーの皆さんにとっても、非常に刺激になる開発プロセスのお話でした。この丹青社 × SITURAEMON の共同開発プロダクトですが、実際に購入できるようになるのはいつ頃からなのでしょうか?

実際に購入できるようになる時期について語る2人
石川:サプライヤー側の製造・供給体制としては、すでに完全に整っております。ですので、SITURAEMON のサイトから「うちのオフィスに導入したい」「次の案件で使いたい」とご相談、発注いただければ、すぐにお届けすることが可能な状態です。
実物を確認したいという方は、ぜひ中目黒のショールームに足をお運びいただければ、実際の質感や組み替えの仕様などをご案内させていただきます。

SITURAEMON オフィス(中目黒ショールーム)
塩田:ただモノを作るのではなく「価値」を提供しなければならない時代だからこそ、事務作業やナレッジ共有はDX化して徹底的に効率化し、その分の時間を本質的な「クリエイティブ」に割いていくべきだということですね。
これからのオフィスづくりを考える上で、非常に納得のいくセッションでした。本日はどうもありがとうございました。
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