オフィスに個室を作るには?3つの方法と費用相場を比較

オフィスに個室を作るには?3つの方法と費用相場を比較

自席でのWeb会議の声漏れや周囲の雑音が気になり、会議室以外にも集中・通話用の個室を設けたいと考えていませんか。

オフィスに個室を作る際は、視線と会話音のどちらをどの程度遮断すべきかを明確にし、パーティション・個室ブース・造作壁の3手法から予算や現場条件に合わせて選ぶ必要があります。本体価格や外寸だけで判断すると、付帯する設備工事費の見落としや換気不良、動線の不備といった運用の失敗を招きます。

本記事では、3手法の費用や特徴の比べ方、運用時の対策、消防・建築手続き、寸法に合わせた什器の選定手順を解説します。

オフィス個室化の3つの方法と費用比較

オフィスに個室環境を設ける手法は、置き型や施工型のパーティション、個室ブース、内装工事による造作壁に大別されます。

設置方式によって費用の算出根拠や工期の要素、遮音の限界、移設・原状回復の条件が異なります。各手法の主な比較軸は以下のとおりです。

方式 費用の根拠と主な内訳 工期の主な要素 音の遮断範囲 移設・原状回復の確認点
置き型パーティション 製品価格。製品例としてSPT-PB002は6枚1セット標準価格税込170,500円(送料別、お客様組立て)。一律相場ではなく製品例 納期と社内での組立作業 視線遮断が主。開口部があるため会話音は漏れる 分割・移動が容易。床面の擦れ傷等を確認
施工型パーティション パネル本体、笠木、巾木、扉、設備取り合い部材等を含む個別見積 パネル製作期間、現場搬入、下地・建て込み工事 接合部や扉仕様により変動。天井や隙間の処理に依存 天井・床・壁の留め付け跡の補修範囲を確認
個室ブース(フルクローズ型) 本体、搬入費、電源引き込み工事等を含む個別見積。遠隔相談ブースUDタイプのようなオープン価格の製品は見積もりで確認 納期、搬入組立、電気設備工事、消防事前確認 天井・壁・扉で囲う構造。完全防音ではなく実機で確認 配線撤去や解体費用、床固定箇所の補修有無を確認
個室ブース(セミクローズ型) パネル本体や内蔵什器を含む個別見積。閉鎖型より安価とは限らない 納期、搬入組立、配線作業 天井や壁の一部が開口。周囲への音漏れを前提に配置 分割搬出の可否と床面の保護状態を確認
造作壁 LGS下地、石膏ボード、遮音材、建具、設備変更等を含む内装一式の個別見積 実施設計、資材調達、大工・内装工事、各種法令手続き 内部充填材や扉の遮音仕様、取り合い精度により変動 賃貸借契約に基づく解体撤去と入居前状態への復旧

1. パーティション

パーティションによる区画形成は、大がかりな固定を行わない置き型と、躯体に部材を留め付ける施工型に大別されます。

置き型のローパーティションは、自立脚や連結パネルを用いて視線を遮る手法です。上表のSPT-PB002は、パネルをファスナーで連結して組み立て・分解できる製品です。工事を伴わず短期間で導入できる一方、天井や床との間に隙間が生じるため、周囲への声漏れを防ぐ用途には向きません。

一方の施工型パーティションは、天井や床のレールにパネルを建て込む工法です。空間を天井付近まで区切ることが可能ですが、専門業者による現場施工が必要となります。建物の下地構造によって補強工事が発生する場合もあるため、手配前に施工業者へ下地調査を依頼し、総額見積を比較することが重要です。

2. 個室ブース

個室ブースは、既存の執務フロア内に家具や設備として独立した作業空間を置く手法で、全体を囲うフルクローズ型と一部を開放したセミクローズ型があります。

フルクローズ型は、天井・壁・扉で囲まれた構造を持ち、Web会議や通話の専用席として適しています。ただし、密閉に近い構造であっても完全防音を保証するものではなく、開口部の気密性や建具の仕様によって音漏れや外音の侵入は生じます。また、コクヨの遠隔相談ブースUDタイプのようにオープン価格で提供され、レイアウトに応じて別途設備工事が必要となる事例や、同社のWORKPODのように耐震配慮のための床固定金具が付属する事例もあります。すべてのブースが工事なしで置けるわけではない点に注意が必要です。

セミクローズ型は、天井が抜けていたり壁の一部が開口していたりする構造です。開口部から空気を取り込めますが、室温は設置場所の空調にも左右されます。また、通話内容が外へ漏れやすくなります。人事面談や商談など、秘匿性が求められる会話には適さない点に留意しましょう。

3. 造作壁

造作壁は、軽量鉄骨(LGS)や石膏ボードを用いて内装工事として壁や扉を新設し、完全に区切られた部屋を構築する手法です。

柱や梁、既存窓の位置に合わせて部屋の寸法を設計できます。壁の内部に吸音材を充填したり遮音シートを施工したりすることで、用途に応じた遮音性能を確保しやすい利点があります。照明スイッチやコンセント、空調吹き出し口の移設・増設も内装計画と一体で調整可能です。

一方で、他の工法と比べて設計や現地造作の工程が多く、初期費用や現場工期が長くなる傾向があります。また、退去時に壁を解体して入居前の状態へ戻す原状回復工事が必要になる場合があります。設置にかかる工事費だけでなく、賃貸借契約書やビルの内装工事基準書を確認し、将来の原状回復範囲まで織り込んだ総費用で採算を検討する必要があります。

個室化で期待できる3つの効果

個室化で期待できる3つの効果の図解

執務フロア内に個室環境を設けることで、業務内容に応じて働く場所を使い分けられるようになり、音環境や業務効率の課題を整理できます。

1. 集中作業の環境確保

個室を導入する主な効果は、周囲の視線や突発的な会話から物理的に距離を置き、思考作業に集中できる席を確保できる点にあります。

オープンなフロアでは、同僚の通話や通行者の動きが集中を妨げる場合があります。周囲からの視線を遮るだけであれば半個室のパーティションでも一定の効果を得られますが、他人の会話内容まで遮断したい場合は壁や扉で囲われたブースのほうが適しています。

ただし、無言で集中したい人と通話を行う人が同じブース群に混在すると、ブース内外での音漏れが原因で利用者の不満につながります。「集中ブースは発話禁止」「通話はWeb会議用ブースのみ」といった運用ルールを定め、目的に応じて使い分ける環境を整えることが大切です。

2. Web会議の専用場所

Web会議の専用場所を確保することは、自席での通話による周囲への声漏れと、相手側への環境音の混入という双方向の問題を防ぐうえで有効です。

自席でWeb会議を行うと、周囲に配慮して小声になり説明が伝わりにくくなったり、逆に発言内容がフロア中に響いて周囲の集中を妨げたりします。個室でも声漏れは起こり得るため、想定する声量で話し、ブース外の席でも聞こえ方を確認します。

導入にあたっては、ブース内の照明や有線LAN、電源の有無を確認するとともに、使用するPCやヘッドセットを用いてマイクテストを実施しましょう。空調ファンの作動音や外部の環境音が相手側にどの程度拾われるかを事前に検証することで、安定した通話環境を構築できます。

3. 機密会話の漏洩防止

人事面談や採用面接、取引先との契約交渉など、第三者に聞かれてはならない会話を保護する機能も個室化の重要な役割です。

簡易間仕切りのみで区切られた空間では、小声で話していても固有名詞や金額などの重要単語が隣接エリアへ漏れ伝わるリスクがあります。機密会話を成立させるには、天井まで仕切られたフルクローズ型ブースや造作壁による個室が候補となります。

サンワサプライの吸音効果に関する検証資料にあるように、素材単体の吸音率と壁全体の遮音性能(透過損失)は別の指標です。製品カタログの数値だけで遮音性を判断せず、扉を閉めた状態で実際に会話を行い、通路や隣席で具体的な内容が聞き取れないかを事前に検証することが欠かせません。

個室化における3つのデメリットと対策

個室の設置は業務環境を改善する一方で、設置スペースの圧迫や対面コミュニケーションの減少、閉鎖空間特有の熱のこもりといった課題を伴います。

1. 設置スペースと予算の確保

個室の導入は、ブース本体の設置面積だけでなく、扉の開閉軌道や安全な通行動線を確保する必要があるため、フロアの有効面積を圧迫します。

本体の外寸のみで配置を決めると、扉を開けた際に背後の主通路を塞いでしまったり、隣接する執務デスクの椅子が引けなくなったりします。また、遮音性の高いブースや造作壁は、本体費用のほかに搬入費や電気引き込み工事費が加算されるため、複数台をまとめて導入すると予算負担が大きくなります。

対策として、最初から全フロア分を一括調達するのではなく、利用頻度の高いエリアへ1〜2台を試験的に導入し、利用動線や稼働率を測定する方法が堅実です。実際の利用状況を検証したうえで、必要な性能基準を維持しながら段階的な増設を進めましょう。

2. 対面コミュニケーションの減少

個室に長時間こもる利用が増えると、気軽な相談や情報共有の機会が減る場合があります。誰が利用中か分からない、特定の社員が終日占有するといった運用も、連携や他の人の利用を妨げます。

業務に合わせて働く場所を選ぶABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の考え方を取り入れ、集中用の個室とは別に、オープンな相談場所も用意します。予約状況を共有し、1回の利用上限や終了時の片付けを決めましょう。導入後は、予約が埋まっていても無人の時間がないか、社員が相談相手を探し回っていないかを確認し、ルールを調整します。

3. 閉鎖空間における暑さと換気

密閉性の高いフルクローズ型ブースでは、利用者の体温やPC・モニターなどの電子機器の発熱により、内部の室温が上昇しやすくなります。

密閉された狭小空間では、空気が滞留すると短時間の利用でも息苦しさや不快感を招きます。換気ファンによって空気を循環・排出する機能と、室温そのものを下げる冷房の機能は別物であるため、ファンが回っていても執務室の冷気を取り込めなければ熱こもりは解消されません。

導入を検討する際は、給排気口の位置や換気仕様を確認し、フロア側の空調の風が届きやすい位置にブースを配置することが重要です。導入前にデモ機を利用し、PCを稼働させた状態で想定される利用時間滞在してみて、内部の温度変化やファンの騒音レベルを確認しておく必要があります。

設置前に確認すべき法規制と現場条件

設置前に確認すべき法規制と現場条件の図解

個室ブースの設置や間仕切り工事を行う際は、消防法や建築基準法への適合性、ならびにビルの躯体構造に関する物理的制約を精査しなければなりません。

消防法と建築基準法の適合条件

可動式ブースと固定間仕切りでは、消防・建築上の扱いが異なります。製品の大きさだけで工事や設備の要否を判断しないことが大切です。

消防庁の消防予第404号通知(2024年8月23日、211号通知の改正)は、床や壁に固定されていない可動式ブース等を対象に、一部の消防設備を設置しない特例を示しています。工具等で簡単に取り外せる固定は例外ですが、床面積6㎡以下だけで特例が成立するわけではありません。

内装材・自動消火装置と点検、または消火実験等による性能確認、火災の早期覚知などの条件があり、使用目的に応じて要件の組み合わせも異なります。火気設備や宿泊用途は対象外で、仮眠を伴う利用には別の追加条件があります。対象部分の過半をブースが占める使い方も想定されていません。東京消防庁の運用基準等を参照し、仕様・使用目的・内装什器を示して所轄消防署へ確認します。

建築上は、名古屋市の例規集のように、通知の要件を満たすブースを建築物として扱わない行政例があります。一方、固定間仕切り等で設ける室は、用途に応じて居室該当性や換気計画の確認が必要です。熊本県の解説では、利用者が入れ替わる継続使用も居室の判断に含まれるため、短時間の予約制だけでは判断できません。設計者と換気基準を照合し、建築指導窓口へ図面を持参して相談しましょう。

天井形式と搬入経路の物理条件

個室の施工やブースの設置にあたっては、オフィスの天井構造や建物の搬入動線といった物理的制約を事前に照合する必要があります。現場で確認すべき主な物理条件と相談先は下表のとおりです。

確認対象 測定・照合する内容 事前相談・確認先
天井下地の構造 システム天井のフレーム位置や耐荷重、在来天井の野縁・吊りボルトの補強条件 ビル管理会社、施工業者
天井の有効高 梁下、照明器具、空調吹き出し口等からの実質的な高さ。上部排気ファンや組立作業のクリアランス ブースメーカー、施工業者
搬入経路の寸法 エレベーターの開口幅・奥行・高さ・積載荷重、階段の踊り場旋回幅、共用廊下の最小幅 ビル管理会社、運送・搬入業者
工事・搬入ルール 作業可能時間帯(夜間・休日指定)、養生範囲、防災センターへの事前申請手続き ビル管理会社、防災センター

オカムラのカタログでも留め付け部材は躯体仕様への適合が条件です。天井の形式名だけで判断せず、下地と補強位置を現地で照合します。搬入は完成品の外寸に加え、実際に運ぶ分割梱包の寸法で検証しましょう。

個室空間に合う什器の選定方法

個室の構造や配置が決まった後は、限られた室内の寸法を有効に活用し、快適な作業姿勢を維持できる什器を選定します。

動線と作業面を踏まえた採寸

個室内の家具は、内装仕上げ後の内寸と実際の動作から選びます。天板の幅・奥行きだけを部屋に合わせても、椅子を引けない、内開き扉が机に当たる配置では使えません。

図面に机、使用する椅子、扉の開閉軌道を描き、着席・起立・出入りの順に動作を確認します。奥行きは机の前端から背面の壁までを測り、椅子を引いた状態でも身体が通れる余地を確保しましょう。

幅木や柱の出幅、コンセントプレート、配線も有効寸法に含めます。施工誤差に対する必要な余裕は施工担当者と確認し、机上にPC・モニター・書類を置ける広さも確保したうえで、家具寸法を決定します。

既製品とサイズオーダーの使い分け

什器の調達では、規格化された既製品を基本としつつ、空間寸法に合わず動線や作業領域に支障が出る場合にサイズオーダーを検討するのが合理的です。

既製品は寸法規格が決まっており、候補同士の価格・在庫・納期を比較しやすい選択肢です。個室の内寸に既製品が無理なく収まり、椅子の引きしろや通行動線が十分に確保できる場合は、既製品の選定が適しています。

一方、既製品を置くと通路が極端に狭くなる場合や、壁との間に使い道のない隙間が生じる場合は、幅や奥行を指定できるサイズオーダーが有効です。ただし、空間に合わせて天板を小さくしすぎると、PCやモニター、書類を広げる作業面が不足するため、業務で扱う機器の寸法を机上面に割り当てて必要最低限の寸法を確保しましょう。

SITURAEMONでの部材調達

SITURAEMONは、対応する天板を1cm単位で指定でき、天板・脚の単品調達にも対応しています。ラバーウッド天板は下穴加工がないため、固定金物を施工担当者と確認します。Web上で寸法と適用価格を確認し、最短5営業日程度の発送目安は納品日とは区別して手配しましょう。

オフィス個室化まとめ

オフィスへの個室導入を成功させるには、目的が「視線を遮る集中スペース」なのか「声漏れを防ぐ通話・面談の場」なのかを定義し、パーティション・個室ブース・造作壁の特徴を同条件の見積もりから比較することが重要です。

本体価格やカタログ寸法だけで判断せず、電源や換気などの設備条件、消防通知に基づく特例基準、建築基準法上の居室該当性、椅子の引きしろを含めた什器の納まりを一連の要件として精査する必要があります。

まずは自社で個室を必要とする業務内容や同時利用人数、混雑する時間帯を整理し、設置候補エリアの有効寸法を実測したうえで、専門の施工業者やブースメーカーへ具体的な図面を持参して相談を進めましょう。