オフィスデスクを新調したり日々のPC作業で身体の疲れを覚えたりした際、職場のデスクが何cmで作られていて自分に合っているのか分からず悩んでいませんか。
身体に合う作業環境を整えるには、机単体の寸法だけで良し悪しを判断せず、椅子の座面高や実際の作業姿勢と組み合わせて確かめることが基本です。
オフィスの標準寸法をそのまま使い続けていると、無意識のうちに肩を持ち上げたり足裏が浮いたりして姿勢に負担がかかります。
本記事では、オフィスで広く使われる72cmの背景、身長に応じた座面高と差尺の計算方法、作業による基準の違い、身体への影響から具体的な対処法までを解説します。
オフィスデスクの標準的な高さと72cmの理由
オフィスで使われる執務用デスクの標準的な高さを調べると、多くの製品で720mm(72cm)という寸法が採用されています。これは一般社団法人 日本オフィス家具協会(JOIFA)が安全・快適なデスクの選び方のなかで推奨している寸法です。業界団体の推奨値であり、働く人全員に合う高さを保証するものではありません。
JOIFAは、720mmを推奨する理由として次の3点を挙げています。
- 平均身長の変化や外国人ワーカーの増加への対応
- 袖引き出し最上段を20mm深くすることによるA4書類の収納性向上
- 車いすの肘掛けが天板下に収まる空間への配慮
ただし、車いすへの配慮は一般的な肘掛けの高さや天板の厚みを想定した説明であり、天板上面が72cmであればすべての車いすが収まるわけではありません。実務においては、床から天板下面や幕板下端までの有効高さ、脚と脚の間の幅を個別の車いす寸法と照合する必要があります。
あわせて公的な衛生管理基準における位置づけも確認が必要です。厚生労働省の情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン解説では、高さ調整が可能な机は床から60〜72cm程度、高さ固定の机はおおむね65〜70cm程度が望ましい実用的な範囲として示されています。これらは大部分の作業者に合わせるための推奨目安であり、法律上の義務や上限値ではありません。標準寸法を過信せず、利用者の座り方や作業姿勢に合っているかを個別に確かめる視点が欠かせません。
身長に合ったデスクと椅子の高さの求め方
オフィスの標準寸法である72cmが分かっても、それが自分自身の身体に合っているかは別問題です。机の使い心地は、組み合わせる椅子の座面高や作業内容によって大きく変化します。
座面高と差尺から算出する計算式

自分に合った作業環境を整える基本の指標が「差尺(さしゃく)」です。差尺とは床からデスク天板上面までの高さから、床から椅子の座面までの高さを差し引いた寸法を指します。座面に対して机がどのくらい高い位置にあるかを示し、広すぎると肩を上げやすく、狭すぎると前かがみになりやすいため、姿勢も合わせて確認します。
JOIFAが安心・安全なイスの選び方で示している計算式は以下の通りです。
- 座面高の目安 = 身長 ÷ 4
- 差尺の目安 = 身長 ÷ 6
- デスク高さの目安 = 座面高 + 差尺
身長170cmなら、座面高42.5cm+差尺約28.3cm=デスク高さ約70.8cmです。足し算は丸める前の数値で行い、結果を小数第1位で四捨五入します。
寸法は床を基準面として測ります。椅子は人が座って座面クッションが体重で沈み込んだ状態の高さを測定します。厚生労働省のガイドライン解説では、着座時にクッションが2〜3cm沈み込んだ状態の座面高について37〜43cm程度の調整範囲が望ましいとしていますが、計算値が範囲内でも適合が保証されるわけではないため着座姿勢の確認が不可欠です。
身長別の目安一覧と個人差の確認点
JOIFAの計算式に基づき、身長150cmから185cmまでの目安一覧をまとめました。各数値は未丸めの計算式から算出し、小数第1位で四捨五入しています。
| 身長 | 座面高の目安 | 差尺の目安 | デスク高さの目安 |
|---|---|---|---|
| 150cm | 37.5cm | 25.0cm | 62.5cm |
| 155cm | 38.8cm | 25.8cm | 64.6cm |
| 160cm | 40.0cm | 26.7cm | 66.7cm |
| 165cm | 41.3cm | 27.5cm | 68.8cm |
| 170cm | 42.5cm | 28.3cm | 70.8cm |
| 175cm | 43.8cm | 29.2cm | 72.9cm |
| 180cm | 45.0cm | 30.0cm | 75.0cm |
| 185cm | 46.3cm | 30.8cm | 77.1cm |
この表の数値は調整を始める初期目安です。同じ身長でも座高や脚の長さなど体形の比率は一人ひとり異なり、靴底の厚みや座面クッションの硬さによっても作業高さは変動します。
たとえば身長155cmの場合、計算上のデスク高さは約64.6cmとなり、標準の72cm固定デスクとは約7.4cmの差が生じます。しかし、机を必ず7.4cm下げなければならないと機械的に判断する必要はありません。重要なのは差の大きさではなく、足裏全体を床に着けた状態で肩が自然に下りているか、肘や手首に無理がないか、太ももや膝まわりに十分なゆとりがあるかを着座状態で確かめることです。
書き仕事とPC作業による作業面の基準
机の高さの検討では、作業内容による作業面の高さの違いも考慮します。書類にペンで筆記する作業と、キーボードやマウスを操作するPC作業では、手や腕を支える位置が異なります。
筆記作業では天板面そのものが作業面ですが、PC作業では天板上のキーボード上面が作業面となり、手元が数cm持ち上がります。厚生労働省のガイドライン解説では、好ましい作業姿勢として「上腕と前腕の角度が90度以上で、キーボードに自然に手が届くこと」が示されています。
ただし、PC作業だからといって一律に机を2〜3cm低く補正すべきという固定ルールはありません。同じ机で両方の作業を行うことが多いため、日常的に作業時間の長い主作業を基準に椅子の高さや作業面を合わせ、もう一方の作業も試して違和感がないか点検します。手元の入力位置と画面の視線高さを切り分けて観察し、無理のない位置関係を整えましょう。
デスクの高さが身体に合わない場合の影響
机や椅子の高さが合っていない環境で作業を続けると、身体各部に不自然な力が加わり、姿勢の崩れや違和感となって現れます。机が高すぎる場合、低すぎる場合、足が浮いている場合で生じる姿勢の乱れを客観的に見極める必要があります。
机の不適合によって生じやすい姿勢の乱れと点検の着眼点を以下に整理しました。
| 状況 | 起こりやすい姿勢の偏り | 点検する部位と確認事項 |
|---|---|---|
| 机が高すぎる | 肩の持ち上がり、手首の上向き反り返り | 肩や首筋の緊張、打鍵時の手首角度 |
| 机が低すぎる | 背中の丸まり、前屈姿勢の固定化 | 作業面の低さか画面位置の低さかの切り分け |
| 足が浮いている | 太もも裏の圧迫、足元の支え不足 | 足裏接地の有無、座面前端と太ももの接触圧 |
確認する際は、普段の筆記や入力動作を再現します。キーボードに手を置くときから肩が上がるのか、画面を見るときだけ前かがみになるのかで、見直す場所が変わるためです。後者であれば、天板の高さを変える前にディスプレイの位置と距離を確かめましょう。
なお、身体の不調を机の高さだけを原因として断定することはできません。厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針が示す通り、不調には作業姿勢、作業時間、体格、心理社会的要因などが複合的に関与します。机の調整をひとつの契機としつつ、適宜小休止を挟んで姿勢を変え、違和感が続く場合は医療機関や産業保健スタッフへ相談しましょう。
デスクの高さが合わないときの3つの対処法
現在のデスクや椅子が合っていないと感じても、すぐに買い替える必要はありません。家具の調整機能を正しく使い、補助器具を組み合わせ、それでも解決しない場合に什器の見直しを検討するという段階的な手順で進めます。
1. 椅子の高さを足裏基準で合わせる

作業環境を改善する最初のステップは、椅子の高さを正しく合わせ直すことです。調整手順はデスクの可動性によって異なります。
| デスクの条件 | 選ぶ対応 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 高さ可動デスク | 足裏接地を基準に座面高を決め、天板を後から調整 | かかとを含む足裏の接地、肘の自然な角度 |
| 高い固定デスク | 入力位置に合わせて座面を上げ、足台を併用 | 手腕の脱力、足台による支持面の確保 |
| 低い固定デスク | 座面を下げて肘角度を保てるか確認 | 膝や太ももと天板裏・引き出しの干渉有無 |
可動デスクでは、かかとを含む足裏全体が床に接地し、太腿上部が水平で膝下が床と直角に近い位置へ座面を合わせ、天板を腕の自然な高さへ合わせます。
高い固定デスクでは、座面を下げると差尺が広がり肩の負担が増すため、腕を自然に置ける位置まで座面を上げ、足元には足台を併用します。低い固定デスクで座面を下げても膝が天板裏にぶつかる場合は、机や座席の変更を検討します。
座面を合わせる際は太もも裏の圧迫も確認します。厚生労働省のガイドラインでは、椅子と大腿部膝側背面の間に手指が押し入る程度のゆとりが望ましいとされています。座面奥行きが合わない場合はクッション等で補います。また、天板が高い場合のキーボードトレーや、画面が低い場合のモニターアームも有効ですが、天板裏フレームや膝上空間との干渉を確認し、手元と画面の位置を切り分けて調整しましょう。
2. フットレストで足の支持面を補う
高い固定デスクに合わせて椅子の座面を引き上げた結果、足裏が床から浮いてしまう場合は、フットレスト(足置き台)を導入して足の支持面を補います。
厚生労働省のガイドラインでも、椅子に深く腰掛けた際に足裏全体が床に接しない場合は、必要に応じて滑りにくい足台を備えることが明記されています。足元に安定した支持面ができることで太もも裏への圧迫が分散され、安定した着座姿勢を保ちやすくなります。
フットレストを選ぶ際は以下の点を確認しましょう。
- かかとを含む両足が収まる面積
- 滑りやぐらつきのない安定性
- 膝や太ももが天板裏に当たらない高さ
- チェアの脚・キャスターと干渉しない位置
段ボール箱や雑誌の束などを仮設の足台として使い続けるのは避けてください。体重で箱が潰れたり床で滑ったりして姿勢を崩す恐れがあり、安全性が確保できません。足をしっかり支えられる専用の備品を用意し、製品の説明書に従って設置しましょう。
なお、フットレストは机が低すぎる問題や膝まわりの空間不足を解消するものではありません。導入時は足元のOAタップやLANケーブルを踏まないよう配線ルートを確認し、オフィスの備品設置ルールに沿って手続きを進めることが大切です。
3. 高さを調整できるデスクに切り替える
椅子の調整やフットレストの追加を行っても、足の支持、手腕の自然な角度、膝まわりの空間が両立しない場合は、デスク自体の切り替えを検討します。立ち作業と座り作業を交互に切り替えたい場合にも昇降デスクが適しています。
昇降デスク導入で最も重要な確認項目は、「完成時の天板上面の最低高さと最高高さ」です。昇降デスクであっても最低天板高が70cm前後の製品では、小柄な方が座って作業する際に天板が高すぎる場合があります。脚部単体の寸法と天板取り付け後の完成寸法を混同せず、本人の座位目安まで十分に下がるかを確かめてください。
昇降機能だけで決めず、必要な高さに届くか、日常の使い方に合うかを確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 | 判断が変わる条件 |
|---|---|---|
| 完成時の高さ | 天板厚を含む最低・最高高さ | 座り作業の高さまで下がるか、立ち作業にも使うか |
| 操作方法 | 高さ変更の手順、記憶機能の有無 | 高さを変える頻度、複数人で使うか |
| 電源・配線 | 電源の位置、上下動に必要なケーブル長 | 電動式を使うか、周辺機器の配置が固定されているか |
| 荷重・設置 | 耐荷重の定義、天板重量、昇降経路 | モニターの台数、天板素材、周囲の棚や窓枠の位置 |
デスクの選定では天板の幅や奥行き、耐荷重の定義も点検します。PCや複数モニターを配置できる広さを確保するとともに、仕様の耐荷重が天板自体の重量を含んだ値か、天板上の最大積載荷重かを確認しましょう。昇降時にケーブルが突っ張らないよう配線の長さに余裕を持たせ、天板の昇降経路に棚や窓枠などの障害物がないか周囲の安全空間も確保します。
天板のサイズや素材も選びたい場合は、SITURAEMONの電動昇降モデル(集成材)も候補になります。法人会員登録が必要です。選ぶ天板の厚みを含めた完成時の最低・最高高さと、脚の取り付け条件を確認してから見積もりを比較しましょう。
職場の環境を改善する際は個人で勝手に判断して家具を持ち込まず、現状の机と座面の高さ、どのような作業で姿勢に無理が生じているか、既存の調整で何が解決できなかったかを整理します。現状の測定記録と必要な条件をまとめたうえで、総務やファシリティ管理部門へ相談し、組織的な改善として進めていきましょう。
オフィスデスクの高さまとめ
オフィスデスクの標準として広く用いられているJOIFA推奨の72cmは、収納性や空間配慮を含めた推奨値であり、働く人全員にとっての最適な高さを決める絶対的な数値ではありません。作業環境の適合性は机単体で決まるものではなく、組み合わせる椅子の座面高、日常的な作業内容、そして一人ひとりの着座姿勢のバランスによって決まります。
まずは現在のデスク天板上面と椅子の座面高さを実測し、足裏全体がしっかり床に着いた状態で肩や腕に無理がないかを点検することから始めてみてください。現状の寸法と身体の当たり方を把握することが、日々の作業負担を減らす快適な環境づくりの第一歩となります。




