オフィスデスクの高さに悩んだとき、まず気になるのは「一般的に何cmが標準なのか」という点ではないでしょうか。結論から言うと、JOIFAが推奨するオフィスデスクの標準的な高さは720mm(72cm)です。ただしこの数値は身長170cm前後を基準に設計されており、すべての人に最適というわけではありません。
自分に合ったデスクの高さは「座面高(身長×1/4)+差尺(身長×1/6)」という計算式で算出できます。厚生労働省のガイドラインでも、高さ調整できるデスクは60〜72cmの範囲で調整できることが望ましいとされています。
この記事では、標準高さ720mmの根拠から、自分の身長に合った高さの求め方、そしてデスクの高さが合わないときの対処法まで順に説明します。
オフィスデスクの高さはJOIFA推奨の720mm(72cm)

「オフィスデスクの高さは何cmが標準か」という問いに対する現時点での答えは、720mm(72cm)です。これはJOIFA(日本オフィス家具協会)が推奨する数値であり、現在のオフィス家具市場でもっとも普及している高さです。
ただし、この720mmという数値に至るまでには、規格の変遷があります。戦後、日本のオフィス家具は米軍規格を参考にした740mmが主流でした。その後、1971年にJIS(日本産業規格)で700mmが標準として規定されます。ところが1999年にはJISの寸法規定が参考扱いに変更され、業界団体であるJOIFAが独自に720mmを推奨するようになりました。
JOIFAが700mmから720mmへと引き上げた背景には、3つの理由があります。一つ目は日本人の平均身長の伸びと、外国人ワーカーの増加です。二つ目はA4書類サイズに対応した収納スペースの確保です。三つ目は、車いすを使用する方がデスクの下に膝を入れやすくするための寸法確保です。いずれも現代のオフィス環境をより現実的に反映した変更といえます。
一方で、720mmが「すべての人に合う高さ」かというと、そうではありません。厚生労働省のガイドラインでは、高さ調整できるデスクは床から60〜72cm、調整できない固定式のデスクは65〜70cmの範囲が望ましいとされています。つまり公的なガイドラインでも、72cm(720mm)はあくまで上限値であり、最適値は個人によって異なります。
この「個人差」を具体的に示すのが、身長データです。厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査によると、日本人成人の平均身長は男性168.2cm、女性154.8cmです。後述する計算式(座面高=身長×1/4、デスク高さ=座面高+差尺)に当てはめると、身長154.8cmの女性の最適デスク高さは約64.5cmとなります。標準とされる72cmとの差は約7.5cmにもなります。
女性の平均身長を基準にするだけで、標準デスクが7cm以上高すぎることになります。720mmという数値を「一般的な目安」として知りつつ、自分の身長に合った高さを別途確認することが、デスク環境を整えるうえで重要な第一歩です。
自分の身長に合ったデスク・椅子の高さの求め方

オフィスデスクの高さは、単体で決めるものではありません。椅子の座面高と組み合わせて、はじめて最適な作業姿勢が生まれます。特に重要なのが「差尺(さしゃく)」という考え方です。差尺とはデスクの天板高さと椅子の座面高の差のことで、この値が適切でないと、腕の角度や肩の位置がずれて身体に負担がかかります。
JOIFAは差尺を「身長×1/6」、座面高を「身長×1/4」という計算式で求めることを推奨しています。まず座面高を計算し、そこに差尺を加算してデスクの高さを導く、という順序で考えると整理しやすくなります。

ここからは、計算式の具体的な使い方、身長別の目安一覧、作業内容による調整の考え方を順に説明します。
座面高と差尺から算出する計算式
差尺とは、デスクの天板高さから椅子の座面高を引いた値です。肘を自然に下ろしたときに、上腕と前腕がほぼ直角(約90度)になる状態でデスクに手を置ける高さがこの差尺によって決まります。差尺が大きすぎると肩がすくんだ姿勢になり、小さすぎると前傾みになって腰に負担がかかります。
JOIFAの計算式は以下の通りです。
-
座面高の目安 = 身長(cm)× 1/4
-
差尺の目安 = 身長(cm)× 1/6
-
デスク高さの目安 = 座面高 + 差尺
身長170cmの場合で計算すると、座面高は170×1/4=42.5cm、差尺は170×1/6≒28.3cm、デスクの目安高さは42.5+28.3=70.8cmとなります。標準とされる72cmより約1.2cm低い値です。
厚生労働省のガイドラインでは、椅子の座面高は37〜43cmの範囲で調整できることが望ましいとされています。JOIFAの計算式で算出した座面高42.5cmはこの範囲内に収まっており、両者の基準が一致していることが確認できます。
身長別の最適なデスク高さと座面高の目安
身長によって最適なデスク高さは大きく異なります。下の表は、身長150cmから185cmまでの8段階について、JOIFAの計算式に基づいた座面高・差尺・デスク高さの目安をまとめたものです。
|
身長 |
座面高(身長×1/4) |
差尺(身長×1/6) |
デスク高さ目安 |
|
150cm |
37.5cm |
25.0cm |
62.5cm |
|
155cm |
38.8cm |
25.8cm |
64.6cm |
|
160cm |
40.0cm |
26.7cm |
66.7cm |
|
165cm |
41.3cm |
27.5cm |
68.8cm |
|
170cm |
42.5cm |
28.3cm |
70.8cm |
|
175cm |
43.8cm |
29.2cm |
73.0cm |
|
180cm |
45.0cm |
30.0cm |
75.0cm |
|
185cm |
46.3cm |
30.8cm |
77.1cm |
女性の平均身長に近い155cmの場合、最適なデスク高さは約64.6cmです。標準デスク(72cm)との差は7cm以上あります。標準デスクに座ったまま椅子だけで調整しようとすると、座面を高くする必要があり、その結果として足が浮いてしまう問題が起きます。
まず自分の身長に近い行を見つけて、現在使っているデスクの高さと比較してみてください。差が3cm以上ある場合は、何らかの調整を検討する価値があります。
書き仕事とPC作業で変わる最適な高さ
計算式で出した値はあくまで「書き仕事を基準にした目安」です。キーボードを使ったPC作業では、同じ差尺の設定でも手首への負担が異なるため、わずかな調整が必要になります。

書き仕事では、肘が約90度に曲がった状態でペンを持てる高さが基準です。一方、キーボード作業では指先が水平または少し下向きになるのが理想的な姿勢で、デスク天板が2〜3cm低いほうが手首の反りが減り、腱鞘への負担が軽くなります。
実際には1台のデスクで書き仕事とPC作業の両方を行うケースが大半です。そのため、どちらかに最適化したデスク高さを基準にしつつ、キーボードトレーやモニターアームで微調整するという方法が現実的です。キーボードトレーを使えばキーボードの位置を天板より低くでき、PC作業時の手首角度を改善できます。これらの調整グッズについては次の対処法セクションで詳しく扱います。
大切なのは、「書き仕事に合わせるとPC作業が少し高い」「PC作業に合わせると書き仕事がやや低い」という認識を持ち、どちらの作業がメインかによってデスク高さの設定を決めることです。
高さの合わないデスクが招く身体の不調

デスクの高さが身体に合っていないと、毎日の積み重ねで様々な不調が起きます。腰痛は特に深刻で、厚生労働省の令和4年国民生活基礎調査によると、腰痛は男女ともに自覚症状の有訴者率でトップに位置し、人口千人当たり102.1という数値が示されています。デスクワーカーに限ったデータではありませんが、座り続ける環境とデスクの高さが合っていないことは、腰痛リスクを高める要因の一つです。
デスクが高すぎる場合から見ていきます。天板が自分の肘より高い位置にあると、腕を置くために肩をすくめた姿勢が続きます。僧帽筋(肩から首にかけての筋肉)が常に緊張した状態になるため、肩こりや首の痛みが慢性化しやすくなります。また、手首がデスク天板より高い位置で折れ曲がった状態でキーボードを打ち続けると、腱鞘への継続的な負担につながります。

デスクが低すぎる場合は、前かがみの姿勢が問題になります。画面やデスクに視線を合わせるために背中が丸まり、腰椎に負担がかかります。猫背が続くと腰痛が起きやすくなるほか、モニターとの距離が近くなることで眼精疲労も生じやすくなります。
また、小柄な方に多いのが「椅子を上げてデスクに合わせる」という対処です。差尺を合わせるために椅子の座面を上げると、足が床に届かなくなる場合があります。足が浮いた状態では太もも裏が座面の前端に圧迫され続け、血行が悪くなります。この状態が長時間続くと、足のむくみや冷えの原因になります。
いずれの症状も、デスクと椅子の高さを適切に合わせることで軽減できる可能性があります。「長年、肩こりや腰痛がある」という場合、デスク環境の見直しが改善の入り口になることがあります。
デスクの高さが合わないときの3つの対処法

デスクの高さが身体に合っていないと分かったとき、どこから手をつけるかが重要です。費用をかけずにすぐできる調整から始め、それでも対処しきれない場合に投資を伴う方法へと段階的に進めるのが現実的です。会社支給のデスクで天板の高さを自由に変えられないケースも多いため、まずは椅子側からアプローチします。

-
椅子の高さを足裏基準で合わせる
-
フットレストで足を接地させる
-
高さを調整できるデスクに切り替える
1. 椅子の高さを足裏基準で合わせる
最初のステップは、椅子の座面高さを正しく設定することです。基準はシンプルで、足裏全体が床に着き、膝が約90度に曲がる高さです。

まず座面を一度低めに下げてから座り、かかとを含めた足裏全体が床についているかを確認します。次に太もも裏と座面の間に指を差し込んでみてください。指1〜2本分の隙間がある状態が理想です。隙間がなく太もも裏が圧迫されている場合は座面が高すぎ、隙間が大きすぎる場合は低すぎます。
この調整だけで、デスク天板との差尺が改善するケースがあります。これまで座面を高くしすぎていた場合、座面を下げることで結果的にデスクとの高さバランスが整う場合があります。
一方で、椅子を適正な高さに合わせるとデスクが高すぎる、つまり差尺が大きすぎる状態が明らかになることもあります。その場合は、次のフットレストやデスクの変更といった対処法を検討します。
2. フットレストで足を接地させる
椅子をデスクの高さに合わせて上げた結果、足が床に届かなくなる場合があります。小柄な方や、標準デスク(72cm)を使う女性に多いケースです。こうした状況では、フットレストを使って足の接地面を作ることが有効です。
フットレストを置くことで、太もも裏への圧迫が解消されます。足が浮いている状態では太ももの血管が圧迫されて血行が悪くなりますが、接地面が確保されることでこの問題が軽減され、むくみや冷えの予防につながります。
フットレストは数千円から購入できるものが多く、大きな設備投資は不要です。会社への申請が必要な場合も、費用が小さいため承認を得やすいでしょう。まず試してみたい場合は、段ボール箱を重ねたものや、雑誌の束で代用することもできます。数日間試して効果を感じたら、市販のフットレストを購入するという順序が合理的です。
3. 高さを調整できるデスクに切り替える
椅子の調整やフットレストでは対処しきれないケースがあります。デスクの高さが極端に身長と合っていない場合や、立ち作業と座り作業を切り替えながら働きたい場合は、デスク自体の見直しが必要です。
高さ調整できるデスクには、大きく電動・手動・ガス圧の3種類があります。
電動式はボタン操作で高さを変えられ、数値記憶機能を持つ製品も多くあります。操作が簡単で正確な高さ設定ができますが、その分価格は高めになります。手動式はクランクやレバーで高さを変えるタイプで、電動より安価に入手できます。ただし調整のたびに手間がかかるため、立ち作業と座り作業を頻繁に切り替えたい場合には向きません。ガス圧式はガスシリンダーの反発力を利用して高さを変える方式で、電動ほどの自由度はありませんが、比較的スムーズに動かせます。
昇降デスクを検討する際に気をつけたいのは、スタンディング機能を実際に使い続けられるかという点です。立ち作業への切り替えは身体的な習慣の変化を伴うため、使わなくなるケースも少なくありません。まずスタンディング用途よりも「自分の身長に合った高さに固定して使う」目的で選ぶと、費用対効果を得やすくなります。天板サイズと耐荷重も、現在の作業環境に合わせて確認が必要です。
オフィス全体のデスク環境を見直す場合、天板と脚を組み合わせてカスタマイズできるモジュール式の選択肢も増えています。SITURAEMONは天板37〜56種・脚6〜37種の組み合わせで7,000通り以上のカスタマイズに対応しており、電動昇降モデルも展開しています。最短5営業日で出荷されるため、納期の読みやすさも特徴のひとつです。法人や設計施工会社向けのサービスで、法人会員向けの卸売価格で提供されています。オフィスの什器選定に関わる方はSITURAEMONのデスクラインナップを参考にしてみてください。
デスクの導入・入れ替えは個人の判断だけで進めにくいケースもあります。社内の総務担当やファシリティ部門に相談しながら進めると、組織全体の作業環境改善として取り組みやすくなります。
まとめ

JOIFA推奨の720mm(72cm)はあくまで標準的な目安であり、身長や作業内容によって最適な高さは人それぞれ異なります。
まず自分の身長を使って「座面高(身長×1/4)+差尺(身長×1/6)」を計算し、現在のデスクとの差を確認することから始めてください。差が大きければ、身体への負担が積み重なっている可能性があります。
対処の順番は以下の通りです。
- 椅子の座面を足裏基準で合わせる(コストゼロ・今すぐできる)
- 足が浮く場合はフットレストを用意する(数千円で導入できる)
- それでも合わない場合は昇降デスクへの切り替えを検討する
まず今座っている椅子の座面高さを確認し、足裏全体が床に着いているかをチェックしてみてください。この一歩だけで、毎日の作業姿勢が変わる可能性があります。