休憩室を設けても、昼は席が足りず、ほかの時間は使われないことがあります。社員がいつ、誰と、どのように休むかを確かめずに家具を選んでいないでしょうか。
休憩スペースは、静かに休む席と飲食・会話の席を、利用実態に合わせて配置することが基本です。面積が限られるなら、席の向きや利用時間で用途を分けます。
この記事では、4つのタイプと設計の6つのポイント、家具・設備の選び方を解説します。
オフィスに休憩スペースを設ける目的
静かに過ごす人と、同僚と食事をする人では必要な席が違います。大きなテーブルだけを置くと、1人では座りにくく、会話も周囲に遠慮が必要になります。
設置目的を「社員の満足度を上げる」といった言葉だけで決めると、必要な席や設備を選べません。昼食の場所が不足しているのか、仕事から離れて短く休める場所がないのか、まず現状の困りごとを分けます。設置後に利用状況を確かめる際も、この目的に照らして判断できます。
1. 執務から離れて休む場所
静かな休息を目的とするなら、執務席からの視線や電話の声を避け、1人で座れる席を設けます。個室でなくても、壁向きのカウンター席や通路から見えにくい椅子は候補です。
パーソル総合研究所の2024年の調査では、正規雇用就業者2,000人のうち62.7%が休憩を1人で取ると答えました。自社でも同じ割合とは限りませんが、1人席を検討する根拠になります。同調査は休憩の取得とプレゼンティズム(出勤中の心身の不調による生産性低下)の関連も報告しています。ただし、休憩室の設置による改善効果を示したものではありません。
1人席を設けるときは、周囲から完全に隔離することだけを考えず、入りやすさも見ます。人の往来が多い場所に一席だけ置くと落ち着きにくく、奥まった席は利用に気づかれず空いたままになることがあります。座る向き、入口からの視線、通話音を実際の休憩時間に確かめ、社員が使いやすい場所を選んでください。
2. 交流に使える場所
飲食や短い会話を促すなら、飲み物の設備と席を近づけつつ、立ち話が通路を塞がないようにします。食事をする人数に応じた天板と席数も必要です。
静かに休みたい人が利用しにくくならないよう、1人席と複数人席は向きや距離を分けます。面積が足りなければ、時間帯で優先する用途を変える方法もあります。
交流の席は、雑談をしたい人が見つけやすい位置に置く一方、休息の席への通り道にしないことが大切です。飲み物を取る人が静かな席の背後を何度も通る配置では、席を分けても落ち着きません。平面図に給水場所、ゴミ箱、入口を記入し、飲み物を持った人の動きまで追ってみます。
休憩スペースの4つのタイプ
タイプは家具の名称ではなく、そこでの主な過ごし方で選びます。
一つの部屋で用途を兼ねる場合も、静かな席と会話席の距離や利用時間を分けます。
| タイプ | 中心となる使い方 | 先に決めること |
|---|---|---|
| カフェスペース | 飲食、短い会話 | 食事をする人数、飲食設備と清掃の動線 |
| ラウンジスペース | 1人または少人数でくつろぐ | 座る姿勢、会話席との距離 |
| 仮眠・リチャージスペース | 静かに目を閉じる、休む | 視線・光・音への配慮と利用方法 |
| 多目的スペース | 時間帯ごとに休憩と会議などを切り替える | 休憩を優先する時間、家具の移動と収納 |
1. カフェスペース
カフェ型は飲食と短い会話に向きます。立って飲み物を取る人と座って食べる人の動線を分け、昼食に使うなら食器が載る天板の広さを確保します。
執務エリアの一角に置くなら、会話やにおいが作業席へ届くかも見ます。コーヒーマシンには電源に加え、給水・補充・ゴミ回収の動線が必要です。
昼食にも使うなら、短時間の飲み物利用と食事利用が同時に起こるかを確かめます。食事の人が席を長く使う場合、立ち寄った人の居場所がなくなるためです。カウンター席とテーブル席を分けるか、利用が重なる時間をずらす方法があります。こぼした飲み物をすぐ拭ける仕上げと、ゴミを回収しやすい位置も家具選びに含めます。
2. ラウンジスペース
ラウンジ型はゆっくり座る休憩に向きます。椅子を向かい合わせれば会話しやすく、壁や窓へ向ければ1人でも座りやすくなります。
低いテーブルは食事やPC作業には合わない場合があります。兼用するなら座面と天板の高さを試し、ソファへの出入りにも余地を取ります。
ゆっくり座れるソファを増やしても、昼休みの食事席不足は解消しない場合があります。想定する利用が短い休息なのか、同僚との会話なのかを分け、座り方と滞在時間に合う椅子を選んでください。背が高い家具で視線を切る場合は、入口からの見通しや通路を塞がない配置にします。
3. 仮眠・リチャージスペース
仮眠用の椅子を置くなら、倒す空間と周囲からの視線を確認します。横になれる場所を設けるなら、光・音に加えて衛生管理とプライバシーも必要です。

日常の休憩席と法令上の設備は、用途に応じて確認します。事務所衛生基準規則第19条は休憩設備の設置を努力義務とし、第20条は就業途中に仮眠できる機会がある場合などに男女別の適切な仮眠場所や衛生上の措置を求めています。第21条は常時50人以上、または常時女性30人以上の事業場に、男女別で横になれる休養室・休養所を求めています。仮眠場所の計画時には、自社に当てはまる要件を確認してください。
仮眠用の家具を置くときは、座った状態の写真だけで配置を決めないでください。背もたれを倒す範囲、隣席との距離、起きた後に身支度できる動線が必要です。利用時間の目安や予約の要否を決め、特定の人が長時間占有する状態を避けます。
既に休養室がある場合も、日常の仮眠と共用できるかは利用方法と衛生面から確認します。
4. 多目的スペース
可動式の家具があれば、昼は飲食、ほかの時間は打ち合わせに使えます。ただし会議で予約が埋まると休めないため、休憩を優先する時間帯を先に決めます。
家具の移動先と、配置を戻す担当も必要です。昼食前に机を動かす運用なら、その手間を試してから製品を選びます。
たとえば午前中は打ち合わせ、昼は休憩に使うなら、会議の予約が昼前に延びたときの扱いを決めておきます。机を動かす担当がいない日は切り替えられないため、家具の重さやキャスターの固定方法も確認します。会議用の機器や書類の収納場所がないまま兼用すると、休憩時にも仕事の物が残り、休みづらくなります。
休憩スペースを設計する6つのポイント

タイプを決めたら、利用実態と平面図に当てはめて、次の六点を確かめます。
1. 利用者の過ごし方に合うか
社員には家具の希望より、現状の使い方を聞きます。
- 休憩する時刻と、1回の利用時間
- 1人で過ごすか、誰かと食事・会話をするか
- 現在の席で困っていること
短いアンケートと現場観察を合わせ、部署や勤務時間による違いも見ます。1人席の不足が分かれば、設備を増やす前に席の配置を変えられます。
「ソファが欲しいか」だけを聞くと、家具の好みが先に立ちます。「休憩中にしたいこと」「今の場所を使わない理由」を尋ね、回答を昼食、静かな休息、会話などの行動に分けてください。会議室や自席で休む人がいるなら、その理由も聞くと、場所の不足と運用上の問題を区別できます。
希望が分かれたら、使う時間帯と必要な静けさで優先順位を付け、小さな配置変更から試します。
2. 執務エリアと距離を取れるか
休憩席を執務席の正面から外すだけでも、互いの視線を避けやすくなります。平面図には座る向きと入口の位置を書き込み、会話や飲食が作業席へ届くかも確認します。
棚やパーテーションを置く場合は通行と設備を塞がないようにします。床材や照明で境界を示す方法もありますが、音や視線を遮る効果とは分けて考えます。
電話の声が届く場所では、色や照明の切り替えだけでは静けさを作れません。会話席を入口寄り、静かな席を奥に置くなど、音が発生する位置から配置を考えます。十分に離せない場合は、使う時間帯を分ける方が現実的なこともあります。
3. 1人席と複数人席を使い分けられるか
1人席とテーブル席を組み合わせると、静かな休息と食事の両方に対応できます。大テーブルだけでは1人で座りにくく、個別席だけでは同僚と食事をしにくいためです。

会話席の声が静かな席へ届くなら、通路や収納を挟むか椅子の向きを変えます。時間帯で用途を切り替える場合も、その時間に休みたい人の席は残してください。
複数人席は、座る人数だけでなく、食器や資料を置いたときの天板の使い方で選びます。1人席は壁向きにしても、背後を人が頻繁に通ると落ち着きません。椅子に座った目線で、ほかの席や出入口がどう見えるかを比べます。
4. 同時利用人数に席数が合うか
席数は在籍人数ではなく、混む時間の同時利用者数から見積もります。たとえば社内で昼食を取る20人が二つの時間帯に分かれ、各回10人ほど重なるなら、まず10席を図面に置きます。
現場で混雑時刻と滞在時間を調べ、席を増やすか利用を分散するか判断します。椅子を引く通路と、車いすなどで利用する人の動線も確保してください。
観察は一日だけでなく、出社が多い曜日や会議が重なる日にも行います。昼食を取る人が10人でも、入れ替わりが遅ければ次の利用者が待つためです。席数の計算に余裕を足す前に、利用の重なりと待ち時間を把握します。
5. 明るさと居心地を調整できるか
窓際は時間帯によって眩しさや室温が変わります。利用する時刻に光を確認し、ブラインドなどで調整できるか見てください。窓のない場所でも食事や読書に必要な明るさは確保します。
飲食に使う天板は拭き取りやすさ、くつろぐ席は座面高と立ち座りのしやすさを優先します。
6. 運用と清掃を続けられるか
飲食の範囲、混雑時の席の譲り方、退席時の片付けを短いルールにします。ゴミ箱や清掃用品は使いやすい位置に置き、電化製品の補充・点検担当も決めておきます。
開設後は混雑する時間と使われない席を確認し、ルールだけでなく家具の数や向きも見直します。
予約制を採る場合は、予約なしでも短く休める席が残るかを確かめてください。
開設後の見直しでは「利用人数が少ない」だけで結論を出さず、使われない理由を尋ねます。昼に満席でほかの時間に空くなら席数や時間の問題ですが、常に空いているなら場所や用途の設定を見直す必要があります。
休憩スペースに置く設備と家具
設備は主な用途に必要なものから揃えます。食事ならテーブルと衛生設備、静かな休息なら席の向きと照明が先です。
既存の給湯室や会議室で足りる機能を確かめ、新たに必要な設備から選びます。
飲食の設備
ウォーターサーバーやコーヒーマシンは、利用人数と補充方法で選びます。給水・消耗品交換ができる位置に置き、飲み物を持って歩く通路も確保します。

電子レンジや冷蔵庫は、昼食時の利用人数と待つ場所から台数を決めます。電源、清掃、食品の置きっぱなしへの対応も必要です。利用が少なければ、既存設備の配置を見直すだけで足りる場合もあります。
利用者が並ぶ位置が入口や通路と重なるなら、台数を増やすだけでは混雑が解消しません。設備の前で扉を開けたり食品を置いたりする動きを図面で確認します。衛生面では、共有物の清掃頻度と期限を過ぎた食品の扱いを、担当者が実行できる範囲で決めておきます。
テーブル・椅子・ソファ
食事の席は天板と座面の高さ、食器を置ける広さを確認します。ラウンジ席をPC作業にも使うなら、低いテーブルで無理なく作業できるか試してください。ソファの奥の席へ入る通路も必要です。
既製サイズが収まらない場合は、寸法を選べるテーブルも候補です。SITURAEMONの天板と脚を組み合わせる商品を使う場合も、脚と膝の干渉や椅子を引く余地を確認します。
テーブルを選ぶときは、天板の外形に椅子の出し入れと通行の範囲を足して配置を考えます。丸テーブルは会話しやすくても、周囲に椅子を引く空間がないと定員まで座れません。長方形の天板も、短辺に座る想定なら脚の位置を確認してください。
ソファやベンチは座れる人数だけでなく、誰かが座っているときに奥の席へ入れるかを見ます。掃除のために動かす必要がある家具は、重量や床との接地も選定条件です。日常の利用を試す段階なら、まず可動式の家具で配置を変えられるようにしてもよいでしょう。
植物・書籍などの備品
植物は軽い目隠しになりますが、鉢が通路を塞がないようにします。水やりの担当を決められなければ、フェイクグリーンも選択肢です。本や雑誌は片付けと入れ替えができる場所に置き、利用を見て増減します。
オフィス休憩スペースの作り方まとめ
休憩スペースは、自社の休み方に合わせて席と設備を決めると使いやすくなります。静かな休息と飲食・会話のどちらを優先するかが出発点です。
混む時刻と同時利用人数を調べ、席の向き、通路、設備を図面に置きます。開設後も利用状況を見て配置と運用を調整します。
法令で必要な休養室・休養所の要件は、日常の休憩スペースとは別に確認してください。





